ちょっと時間が経ちましたが…今年のナーダム競馬を振り返ります
サインバイノー。H&Aトラベルのバルサーです。
ナーダム祭が終わって少し時間が経ちました。
今年もたくさんのお客様をご案内し、開会式や相撲などをご覧いただきましたが、私は7月12日に競馬会場へ足を運んできました。日本のお客様からよく、「モンゴルの競馬って競馬場があるんですか?」と質問されます。
実は、モンゴルの競馬は日本の競馬とはまったく別の競技です。
競馬場のような円形コースはありません。広大な草原を15~25kmも走る長距離レースで、決まっているのはゴール地点だけ。今回は実際に競馬会場へ足を運び、今年感じたことをご紹介します。


特別列車で競馬会場へ
朝8時、ウランバートル駅を出発する競馬観戦用の特別列車に乗り込みました。約1時間でダワニ駅へ到着し、そこから徒歩で競馬会場へ向かいます。満員電車を想像していましたが、車内は乗車率7割ほど。そして驚いたのは、乗客の半分近くが外国人だったことです。日本人の団体客をはじめ、欧米からの旅行者も多く見かけました。モンゴル相撲や開会式だけでなく、競馬も海外で人気が高まっていることを実感しました。

ゴール地点だけが競馬場
日本の競馬場のようにスタンドやコースが整備されているわけではありません。15~25km離れた草原がスタート地点となり、ゴールだけが競技会場になります。ゴール付近には観客席がコース沿いに並べられ、多くの人が馬の到着を待っています。その周辺には数kmにわたって屋台が立ち並び、まさにナーダム祭のお祭り会場でした。
ホーショールのお店はもちろん、
- 馬乳酒(アイラグ)
- 風船割り
- くじ引き
- 子ども向けゲーム
- 乗馬体験などもあり、競馬だけではなく一日中楽しめる雰囲気です。

去年との違い
今年一番驚いたのは、大型スクリーンがなくなっていたことです。昨年はゴール地点に巨大スクリーンが設置され、先頭集団を追う中継車の映像がリアルタイムで流れていました。しかし今年はスクリーンがありません。今では多くの人がスマートフォンでライブ配信を見るようになったためなのかもしれません。時代の変化を感じました。
スタート前から大渋滞
ゴール付近では、多くの馬が順番待ちをしていました。近づいてみると、出走前の計測をしています。昨年までは係員が目視で確認していたそうですが、今年はレーザーによる計測へ変更されていました。ところがレーザー装置はわずか2台。一つのレースには200頭以上が出走するため、馬の列はなかなか進みません。計測を終えた馬たちは、そのまま騎手を乗せて20km近く離れたスタート地点まで、ゆっくり歩いて向かいます。レースが始まる前から、すでに長い一日が始まっているのです。


時間どおりには始まらない
この日の公式スケジュールは、
- 7:00~11:00 ソヨロン(5歳馬)
- 10:00~13:00 ジョロー(側対歩馬)
- 12:00~16:00 ダーガ(2歳馬)となっていました。
私たちは午前10時頃に会場へ到着。最初のレースは見られなくても、ジョロー馬のレースには十分間に合う予定でした。ところが到着して驚きました。7時開始予定だったソヨロンのレースが、まだ始まっていなかったのです。先ほどの馬の計測が続いており、まだスタート地点へ向かう馬もたくさんいました。
結局、レースがスタートしたのは11時過ぎ。約4時間の遅れです。しかし、不思議なことに誰一人慌てている様子はありません。屋台で食事をしたり、友人と話したり、のんびり馬を眺めたり。そんな時間もナーダムの楽しみ方なのだと感じました。

「宝の馬」ジョロー馬
今回ぜひ見たかったのが「ジョロー馬」のレースです。ジョロー馬は普通の馬とは歩き方が違います。左右の前足・後ろ足を同時に動かす「側対歩(そくたいほ)」という特殊な歩き方をするため、上下の揺れが少ないのが特徴です。昔は長距離移動や戦場で重宝され、現在でも「宝の馬」と呼ばれる貴重な存在です。モンゴルならではの競技の一つと言えるでしょう。

騎手は4〜12歳の子どもたち
ナーダム競馬で最も驚くのは騎手です。騎手を務めるのは4歳から12歳ほどの子どもたち。小さな体で何十kmもの草原を走り続けます。日本では考えられない光景ですが、遊牧文化の中では古くから受け継がれてきた伝統です。


ゴールはスピード勝負ではなく「根性勝負」
レースがスタートすると、およそ10分後には先頭集団がゴールへ姿を現しました。遠くから土煙を上げながら近づいてくる光景は迫力満点です。しかし、日本の競馬のように最後の直線を全力で駆け抜ける姿とは少し違いました。20km以上を走り続けた馬たちは、すでに体力の限界。ゴール前では子どもたちが懸命に鞭を入れますが、馬たちは颯爽と駆け抜けるというより、
「あと少し…」と自分に言い聞かせるように、一歩一歩、懸命に前へ脚を運んでいる。
そんな姿がとても印象に残りました。短距離のスピード勝負ではなく、馬と騎手が最後まで力を振り絞る競技。それがナーダム競馬なのだと感じました。

優勝賞金よりも名誉
入賞は5着まで。今年のソヨロン優勝馬の馬主には500万トゥグルグ(約23万円)の賞金が贈られました。騎手には大統領から記念品が授与されます。金額だけを見ると決して高額ではありません。それでも毎年数百頭もの馬が集まるのは、「ナーダムで優勝した」という名誉が何より価値のあるものだからです。馬主や調教師にとって、一生の誇りになる瞬間なのです。
帰り道もナーダムならでは
レース終了後は渋滞を避けるため、少し早めに待機していた車へ向かいました。ところが、ウランバートル方面へ向かう道路が通行止めになっていました。交通規制だったのか理由は分かりませんでしたが、そのまま市内へ戻ることはできません。結局、北側へ大きく迂回するルートで帰ることになりました。ナーダム期間中は何万人もの人が集まるため、帰りの移動にも余裕を持った計画が必要だと実感しました。
ナーダム祭は終わってしまいましたが、この記事を書きながら、あの日の馬の足音や観客の歓声を思い出しました。年に一度のお祭りだからこそ、人々は楽しみにし、街全体が特別な雰囲気に包まれました。来年モンゴルへお越しになる方は、ぜひ開会式や相撲だけでなく、競馬会場にも足を運んでみてくださいきっと、モンゴルの遊牧文化の魅力をより深く感じられると思います。



