モンゴル最大の祭典「ナーダム」
サィンバイノー!H&A Travel旅行会社のWEB担当のバルサーです。
モンゴルの熱気と遊牧民の魂に触れる、一生に一度は体験したい大祭典「ナーダム」。ここでは、スタジアムでの観戦をより深く楽しんでいただくための事前ガイドとして、祭典の概要や各競技のルールを簡単にご紹介します。
ナーダム祭の概要
ナーダム(モンゴル語で「祭り」「競技」「遊び」の意)は、毎年モンゴル人民革命記念日にあたる7月11日から13日までの3日間にわたって開催される、モンゴル最大の国家行事です。
2010年にはユネスコの無形文化遺産にも登録され、モンゴルの独立と主権、歴史、文化を象徴する祭典として世界的な注目を集めています。

メイン会場となるのは、首都ウランバートルにあるナショナルスポーツスタジアムです。
7月11日の開会式では、伝統的な民族衣装をまとった人々の華やかなパレードや、騎馬隊のアクロバティックなパフォーマンス、馬頭琴の演奏、ホーミー(喉歌)や民族舞踊などが盛大に披露されます。
スタジアムには数万人の観衆が詰めかけ、2025年には日本の天皇皇后両陛下もご出席されるなど、各国の賓客も招かれる格式高く華やかなセレモニーです。
ナーダムを彩る「3大競技」とルール
ナーダムの中心となるのは、紀元前3世紀頃の時代から「男の3大競技」として受け継がれてきたモンゴル相撲(ブフ)、競馬、弓射です。

モンゴル相撲(ブフ)
遊牧民の力と勇気の象徴であり、スタジアムの開会式直後から緑の芝生の上で熱戦が繰り広げられます。
ルール: 日本の相撲とは異なり「土俵」も「制限時間」もありません。
勝敗は、肘・膝・頭・背中・お尻のいずれかが先に地面についた時点で負けとなります。
日本の相撲と違い、手の平が地面についても負けにはならないのが大きな特徴です。
土俵がないため押し出しはなく、足取りなどのダイナミックな投げ技が中心となります。

見どころ: 力士たちは胸の開いた「ゾドグ」というベストと「ショーダグ」という短いパンツを身につけ、試合の前後には両手を広げて鳥が飛ぶような勇壮な「鷹の舞」を踊ります。「鷹の舞」には、大自然の動物たちの力強さを象徴する深い意味や、試合における神聖な役割が込められています。
モンゴル相撲の称号と大相撲の番付比較
| ロマジ | 日本語の意味 | 大相撲の相当する番付 |
| Nachin | ハヤブサ | 前頭 |
| Khartsaga | 大ハヤブサ / 鷹 | 小結 |
| Zaan | 象 | 関脇 |
| Garid | 迦楼羅 / 不死鳥 | 大関 – 準優勝 |
| Arslan | 獅子 / ライオン | 大関 – 優勝 |
| Avarga | 巨人 / 王者 | 横綱 |

各称号の詳細説明
1. Nachin (ナチン) – 前頭級
- 条件: 512人のトーナメントで5回戦突破(ベスト32)。
- 説明: 国家称号の第一歩です。「ナチン」は非常に素早い鳥(ハヤブサ)を意味し、ここから「国を代表する力士」として認められます。
2. Khartsaga (ハルツァガ) – 小結級
- 条件: 6回戦突破(ベスト16)。
- 説明: 2003年に新設された称号です。非常に実力のある若手や中堅力士がこの位置にランクされます。
3. Zaan (ザーン) – 関脇級
- 条件: 7回戦突破(ベスト8)。
- 説明: 伝統的に非常に重んじられる称号です。「象」のように力強く、揺るぎない実力を持つ力士に与えられます。
4. Garid (ガリッド) & Arslan (アルスラン) – 大関級
- ガリッド (8回突破): 決勝戦で敗れた「準優勝者」に与えられる称号です。
- アルスラン (9回突破): ナダムで「初優勝」した力士に与えられる、極めて栄誉ある称号です。
5. Avarga (アヴァルガ) – 横綱級
- 条件: アルスラン(大関)が再び優勝すること。
- 説明: モンゴル相撲の最高位。大相撲の「横綱」と同様、人格と実力の両方を兼ね備えた絶対的な強者にのみ許される称号です。
- Dayan Avarga (ダヤン・アヴァルガ): 2回優勝(強力な横綱)。
- Darkhan Avarga (ダルハン・アヴァルガ): 3回以上優勝(伝説の大横綱)。
モンゴル相撲の特徴的な違い
- 降格がない (引退まで不変): 大相撲は負け越すと番付が下がりますが、モンゴル相撲の称号は一度獲得すると、一生その称号で呼ばれます。
- 昇進のチャンスは年1回: 称号を得るチャンスは、年に一度の「国家大祭ナダム」のみです。
モンゴル相撲(ブフ)の力士が着る衣装(ゾドグと呼ばれるベストやチョッキ)は、サイズが非常に小さく、胸やお腹が丸出しになり前を閉じられないような独特の形をしています。この形状になった理由として、ある面白い伝説が語り継がれています。
昔々、本来は女人禁制である相撲の大会に、男性のふりをしてこっそり参加した女性がいました。そして驚くべきことに、その女性は男性たちを打ち負かして優勝してしまったのです。
これに憤慨した男性陣は、「今後二度と性別をごまかして女性が参加できないようにしよう」と考えました。その結果、一目で女性だと分かるように、胸やお腹が丸出しになる現在の小さな衣装(ゾドグ)を着て相撲を取るルールになったと言い伝えられています

競馬
ウランバートル郊外の広大な草原を舞台に行われる、ナーダムで最も人気のある競技です。
ルール: 最大の特徴は、5歳から13歳くらいまでの子供たちが騎手を務めることです。
馬の年齢(2歳~6歳以上など)ごとにレースが分けられ、15kmから最長30km以上もの長距離を大草原の中で駆け抜けます。

見どころ: 馬の負担を極力減らすため、子供たちは鞍のない裸馬に乗ることもあります。
スタート前には子供たちが「ギンゴー」という馬を鼓舞する歌を響かせます。
100頭以上の馬が土煙を上げて大草原を疾走する姿は、まさに圧巻の一言です。
弓射(伝統弓術)
相撲や競馬の熱狂とは対照的に、静寂と張り詰めた緊張感の中で行われます。ナショナルスタジアムの隣の弓射専用フィールドで競技が行われます。


ルール: 男性は75m、女性は65m離れた位置から、地面に積み上げられた小さな革製の円筒形の的(スリ)を狙います。
男女ともに参加でき、伝統的な衣装「デール」を着用して、木や動物の角で作られた独特の弓を使用します。
見どころ: 見事に的を射抜くと独特の音が響き、的の近くにいる審判や観客が一斉に両手を挙げて「ウーハイ」と特別な歌を歌い、的中を知らせるユニークな風習があります。
番外編「シャガイ競技」
モンゴルのナーダム祭といえば、相撲・競馬・弓術の「3大競技」が有名ですが、実はその会場の隣接テントなどで行われる、もうひとつの伝統競技があります。それが「シャガイ」です。観光客にはあまり知られていませんが、地元の人々にとっては非常に人気が高く、独特の緊張感に包まれる見どころの一つです。


ルール: シャガイは、羊やヤギのくるぶしの骨を使ったモンゴル特有の遊び・競技です。競技者は床に座り、精神を集中させ、手の平にのせたシャガイを指ではじいて約5メートル先に並べられた相手の駒(的)を倒します。
使用される骨は主に羊のものですが、ヤギの骨が使われることもあります。シンプルな道具ながら、モンゴルの遊牧文化を感じさせる奥深い競技です。
見どころ: シャガイ競技の最大の魅力は、その独特の緊張感です。
会場は屋内または専用テントで行われ、競技中は静まり返ります。選手が集中し、指で弾くその瞬間まで、観客も息を呑んで見守ります。
そして——
的に命中した瞬間、静寂が破られ、大きな歓声が上がります。
この「静から動へ」の切り替わりは、まるでサッカーのPK戦のよう。
一瞬の成功で会場全体が一気に盛り上がる、非常にドラマチックな競技です。
2025年7月に公式訪問された天皇皇后両陛下は、弓術競技をご覧になった後、隣接会場でこのシャガイ競技を観覧されました。さらに観戦だけでなく実際に競技もお試しになり、皇后様は見事に的に命中され、会場から大きな歓声が上がりました。
国を挙げての大熱狂と、一生の思い出に残る壮大な歴史絵巻を、ぜひスタジアムの特等席でご体感ください!
開会式が行われるナショナルスタジアムの周辺には、さまざまなテント(屋台)が立ち並びます。中でもホーショール(羊肉の揚げ餃子)の店はどこも人でいっぱいです。
ホーショールはモンゴルの国民食ともいえる伝統料理で、練った小麦粉の生地に羊のひき肉を包み、油で揚げて作られます。揚げパンの中に肉を詰めたような料理で、たっぷりの肉汁が詰まっており、祭りの合間のエネルギー補給にぴったりの一品です。
ナーダムの期間中にホーショールを食べるのは、いわば風物詩のようなものです。なお、会場周辺で提供されるホーショールは、一般的な餃子のような形ではなく、薄く丸い形をしているのが特徴です。




